在野性を失いかけている宗門

 20059月、真宗大谷派宗議会議員任期満了による選挙におきまして、147票という得票で当選させていただきました。

今回の選挙は、選挙制度条例の改正によって、今まで長い間、住職にのみ与えられていた被選挙権が25歳以上の有教師に拡大(住職の承認必要)された初めてのものです。まだまだ、さまざまな課題を抱えた選挙制度ではありますが、教師である女性にも門戸が開かれたことは画期的なことだと思います。

そんな中で、紆余曲折しながらも、私自身、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで立候補したことは、当落関係なく、男性にも女性にも風が吹き、小さな波紋が起きたのではないかと思います。

さらに、全国30教区の選挙区のうち13教区が選挙戦になったということも、今、親鸞聖人750回御遠忌法要を間近にひかえ、宗門に対する何らかのメッセージであると考えられます。選挙になった13教区でも、24年ぶり、20年ぶり、そして東京が16年ぶりという、ある意味、澱んだ状態が続いていたと言ってもいいのではないでしょうか。これは、選挙人のみならず、僧俗共に宗門の歩みに対する無関心が問われているのではないかと思います。

奇しくも、この選挙に至る約一年前には中越地震が起こり、熊谷宗務総長の「ボランティアには限界がある」等の発言を含め、宗門の対応に異議を唱える方々が出たり、6カ月前には教学研究所所長の役免問題、4カ月前の御遠忌お待受け法要における総長演説等、内外の有縁の方々の中で、何か宗門の動きがおかしいと感じられた方は少なくないのではないでしょうか。私もその一人でした。そんな思いの中での選挙であったと思います。

そして、いよいよ、宗議会への初めての参画が始まりました。周知の通り、明治以来、宗議会は男性によって担われてきました。形に表れるところでは議員バッチ、議員輪袈裟(畳輪袈裟ですが、一般的なつけ方ではなく、裏返してつけるようになっています)なるものは男性がつける大きさのものしかないのは言わずもがなです(個人的には統一せずそれぞれ好きな色の輪袈裟をつければいいと考えていますが)。女性の眼で一つ一つ見ていったら、いろいろなところに違和感を覚えるのは必然です。その必然を、そのまま目をつぶるのではなく、内外に声を発していくことが女である私にできることではないかと思います。

和田稠先生は「本山・末寺・僧俗をあげて、私たちは今、体制教団の罪業にまみれたみずからを慚愧することをしらず、神聖教団を誇示する仏法者になっていないのか。あの『宗門白書』に表白された『慚愧する教団』はどこへいったのか」と19849月から863月まで同朋新聞に連載された中で語られています。この20年前の叱咤激励の言葉はまさに、今、私たちに届けられているものだと実感いたします。このまま、今の宗門のありようを自ら問わないでいることは、「教団が教団の名において聖人を流罪にしてはばからぬことになる。まさに破僧罪・謗法罪を免れない」。

今、与・野党問わず、心身ともに官僚型の様相を呈しているとみえます。在野性を見失った宗門は何ほどの意味をも持たないと思います。この危機感を胸に歩んでいきたいと思います。

議 会 報 告

200510月~20062

 

2005

927 玉光さんと一緒にグループ恒沙、無所属(熊谷総長不信任案決議時賛成票を投じて興法議員団を脱会された方々)のそれぞれの会合に参加、歩み方を聞かせていただく。それぞれが何かの時は交流し合いながら歩むことを確認。無所属は当面、会派は形成しない。玉光さんと私はとにかく、無所属の部屋に入れてもらうことになった。

1012日~14日 宗議会 臨時会

12日 午前10時までに宗務所3階の宗議

会へ。各部会の代表者による事前連絡協議会が続き、そのほかの人たちは、一日部屋に座りっぱなし。こんなことなら、本を何冊か持ち込んでおくべきだった。代表者会議では、正副議長、各委員会への人数配分などが協議される。

宗議会65

第1部(興法議員団)37

第2部(グループ恒沙)11

第3部(無所属)10人 私はここに

4(真和系と真和系無所属)7

13 午前10時宗務所へ。副議長候補に
      ついての顛末。

 与党より野党に副議長候補を出すことを認める。恒沙はK氏を候補に出すことを興法に伝える。しかし、興法はK氏を認めることはできず、K氏以外の候補を出すようにと言う。恒沙はその理由の開示を求めるが回答は無し。そのため、恒沙はK氏以外の候補を立てるが、「K氏は靖国訴訟の原告であることを理由に興法は副議長候補とすることを認めなかったとすることを公表する」ことを求めた。これについても、興法はNO。結局話し合いは決裂。興法が正副議長とも占めることとなり、恒沙も単独候補を出すこととなる。

この副議長席をめぐっての話し合いで、私にとっては初めての議場への第一歩は午後3時近くとなった。何かパフォーマンスをと思っていたが、結局、傍聴席の女性の友人と手を振り合って初体験を確認した。

まず議長選挙。単記無記名投票。結果、調 紀氏(興法・久留米)39票 白票22で調(しらべ)氏当選。続いて副議長選挙。結果、黒川紘紀氏(興法・高岡)40票 釈氏(きくち)政昭氏20票 白票1で黒川氏が当選となった。

調議長挨拶 (前略)想えば、宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌を前にして、宗門は多くの課題が山積いたしております。皆様にはこの大事な時期に宗門人のご負託を受けて、議員になられたわけでありますが、多少のスタンスの違いはありましても親鸞聖人と出遭い、真宗大谷派を愛する思いは同じであると深く信じております。

         (文中傍点 旦保立子記す

その後、阿弥陀堂参拝、議場にて議会開会式。

門首挨拶 (前略)このたび招集の宗会においては、宗務総長指名という極めて重要な案件が掲げられておりますので、くれぐれも慎重に議論されることを強く望みます。議員各位には、任期中、宗門存立の本義である同朋社会の顕現に向けて、その本分を全うされるよう切望します。       (文中傍点 旦保立子記す)

熊谷宗務総長が現内局の総辞職挨拶。翌日(14)に宗務総長指名選挙が行われることが決定して閉会。午後755分終了。

議会は議場に議員が参集するまでに、各部の代表者によって、悲しいかな根回し工作を済ませて開始されることがわかった。宗憲に謳われている公議公論・なんびとの専横専断を許さずという文言はどこで実現されるのだろうかと思った。先に夫から「議会という所は魑魅魍魎の世界だぞ」と言われていたが、それを初議会で知ってしまうとは・・・。ただ、議会のありようを考える課題をもらったと思っている。

閉会後、もう一人の女性議員である望月さん(

法・山陽)と「真宗大谷派におけるおんなたちの会」のメンバーの待つ和敬精舎へ。手作りの「祝 女性議員誕生」の横断幕(裏表紙に写真)に迎えられて、交流をした。何せ、当初の予定から議会が3時間も延長したため、ゆっくりと話す時間もなく散会した。でも、まだ、始まったばかり。私にできうる限りの情報公開に努めたいと思う。

14日 宗務総長指名選挙。

   午前10時からの総会後、前日同様、宗務総長候補をめぐっての各部における折衝が始まった。興法は熊谷氏の続投を決めた。しかし、野党は20056月の定期宗議会における熊谷総長の不信任案の意味を問うということから、反熊谷としての候補を出すこととなった。最初は恒沙、無所属それぞれということであったが、長い両者の話し合いの末、無所属の木全(きまた)(名古屋)で統一候補とすることとなった。

     この総長選挙は参議会(門徒会の方々65人で構成)でも、選挙が行われる。宗議会において指名された総長が、参議会でも選挙で指名されれば、そのまま総長に指名されるということになる。そのことから、熊谷氏、木全氏とも参議会へ挨拶に。数の多数を占め、党議拘束のある与党からの総長立候補者が参議会に出向くことはまれだそうです。それだけ、与野党の票が迫っていることを意識しての動きと見られました。

午後2時本会議開会。

 宗議会での選挙の結果、熊谷氏39票 木全氏25票。その後、議場は参議会と交代し両氏の選挙が行われた。結果、熊谷氏53票 木全氏4票。両会多数を占めたことにより、熊谷氏が総長として指名されました。

    参議会での議決は今まで、全会一致を良しとしてきただけに、この総長選挙では参議会の歴史の一ページが開けたと言ってもいいのではないでしょうか。

    ともあれ、議会運営の人選が整いました。しかし、何かすっきりしないものを感じました。それは、数の論理が優先して(それが議会政治だと言われればそれまでですが)、内実が問われていないことです。

総長所信 (前略)50年前、宗祖親鸞聖人七百回御遠忌では、真宗同朋会運動が発足しておることはご承知の通りであります。当時、宗務総長であられた訓覇信雄師は「人間の基礎、個人の基礎、それをどこに見出すべきか。それは、有我の意識を破って無我の精神に立たねばならない。即ち人間を純粋に、かつ根源的に解放する道は仏法であります」とこう示されて、生きる原理と方向を失った時代社会の中で、宗門の果たすべき役割を明示されています。(中略)そこで、我々はどう取り組むべきか。私はやはり、清沢満之先生の求道の姿勢、そして曽我量深先生の教えを道標として、同朋会運動を更に進める、そして、人間救済の原理である浄土真宗の教学を確立する、そのことが大切であるとあらためて憶うことであります。(後略)

第二次熊谷宗恵(金沢・8期・67)内局

     参務

・長久寺徳瑞(日豊・4期・70)

    担当部門 総務部 内事部

         宗祖親鸞聖人七百五十回

御遠忌本部事務室

  ・里雄康意(大垣・4期・56)

    担当部門 本廟部 教育部 

親鸞仏教センター 

教学研究所

   ・高木文善(京都・3期・64)

    担当部門 大谷祖廟事務所 財務部

   ・林  治(大阪・3期・54)

    担当部門 組織部 企画室 

首都圏教化推進本部

   ・安藤伝融(岡崎・3期・55)

    担当部門 研修部 出版部 

         解放運動推進本部(女性室)


127日~8日 宗政調査会

129日 同朋社会推進委員会

宗政調査会には次の専門委員会があります。この委員会には65人すべてが各委員会のどれかに所属します。任期1年。

    教学教化 御遠忌に向けたもの 法難800

    制度機構 宗議会選挙制度 教区会等

    財  務 財務関係

    同朋社会 男女共同参画等

私は制度機構に入り、今一度、選挙制度について考えて行きたいと思いました。現在は宗憲における選挙条例を読み直し、精査しています。主査(興法・大橋さん・京都)は会議の開始、開口一番、「選挙制度については、意見を言い出すと平行線になるからやめましょう」と。そして、「自分は制度機構については精通していないから」と言う始末です。恒沙の藤内さん(仙台)や私たち野党からの意見で選挙制度について今一度、見直していくことになりました。

この宗政調査会はぞくに議員のはけ口の場だと言われているそうです。それは、本会議と連動せず、特に与党議員にとっては大らかにモノが言えるからです。せっかく口角泡を飛ばして各会派のメンバーが本音で討議できるにもかかわらず、言いっぱなしで終わってしまいます。もちろん前年の内容の引継ぎはあります。宗政調査会の常任委員化も意見として与党に進言しているようですが、今のところ進捗はないようです。この件については、続いて発言していきたいと思います。

また、この他に宗議会には各種委員会があります。これは決められた人数の議員で構成されています。

    宗議会同朋社会推進委員会(10)

    真宗大谷派本廟維持財団正常化促進

特別委員会(5)

    真宗本廟両堂等御修復委員会(5)

私は同朋社会推進委員会に所属しました。同委員会の前身は「同和」委員会です。様々な差別問題を課題に事業を立て、全議員対象、ブロック別などでの学習会を企画いたします。任期は4年です。

年間4回から5回の会合があります。調議長も参

加され、身近なところでものが言えるという特典があります。とにかく、どんどん喋っていこうと思います。

 

2006

126日~27日 同朋社会推進委員会

27日~9日 宗政調査会

  午前10時、総会。総長、参務から各担当部署の現況が報告されます。御修復は順調であるとか、募財状況は今年度に入って減少しているとか、おざなりな言葉で終始しています。元宗務総長のN氏は「参務から責任を奪ってしまっている」と。

  また、宗政調査会の会長(但馬さん・大聖寺)は、宗政調査会のあり方に対する提案があり、「問題点はあるが、現行のままでいく。会派を超えて建設的な意見を出し合ってもらいたい」と挨拶された。(???)

  

  以上言い足りないところもありますが、報告とさせていただきます。

  ただ、憲法改正()、靖国問題、教育基本法などについての総長の見解は「教団は運動体ではないので、教団として動きをすることはない。しかし、個人としては自坊で二度と戦争を起こさないように話していく」と語られました。これは小泉首相の靖国参拝理由の内容と同じスタンスであると思いました。今まで、宗門として表明してきた声明をどのように考えているのかを疑わざるを得ないものだと思います。

  親鸞さんを後追いするのではなく、親鸞さんからのメッセージに背中を押されて、私たちの足でこの時代を歩んでいかねばならないと、宮城顗先生がお待受け法要で話されたことが心に刻まれます。

ご 挨 拶

この度、選挙事務長からの引き続きで、「光風」の事務長に就任いたしました、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

この会は、宗会議員の旦保立子さんとともに歩む会として、また宗門に、私たちの声を新しい「光の風」として吹かせていくことを願いに設立するものであります。

具体的には、立子さんの「議会報告」。そして宗門の状況や現状を聞き、ともに学び、またあるときは善友となるようなことを目指すとともに、さらには宗門内外の方をお招きし、現代社会の課題についてお話を伺う「学習会」を開催していくものであります。

9月の宗会選挙で投票していただいた147人の有権者の方々、投票権はないが熱い想いを送ってくださった教区内外の同行の方々。さらには与野党・会派を超えて繋がっていけるような動きとして歩んで参りたいと願っております。

どうぞ、ご支援・ご賛同いただきますようお願い申し上げます。

東京5組 道教寺 副住職 須賀 力

☆表紙のタペストリーは、教区報恩講で展示した、宗泉寺のご門徒さんたちが作って下さったものです。反原発を願いとして「回れ風車」というイメージで、キルトにお一人お一人がメッセージを書き縫い合わせたものです。現在ベラルーシの保育園に飾られています。

光風だより 創刊号

発行日 2006年2月24日

発行所 宗門に風をおくりこむ会“光風”

〒 330—0842 埼玉県さいたま市大宮区浅間町2-159-1 宗泉寺内

Tel:048-644-7600  Fax:048-644-7601

宗門に風をおくりこむ会”光風”創刊号