2006年 宗会(常会)宗務総長演説(要旨)

 

2006年6月1日

 

本日ここに、第46回宗議会の常会が招集されましたところ、議員各位にはご繁忙の中にもかかわらず、ご参集くださいましたこと、誠にご苦労さまに存じます。

 平素より宗門の運営に対しまして格別のご尽力をいただいておりますこと、誠にありがたく厚く御礼を申し上げます。

私ども内局は、宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌を中心とする諸事業につきまして、慎重且つ着実にその取り組みを進めてまいりました。御修復事業への取り組みはもとより、2005年度からは、御遠忌テーマ「今、いのちがあなたを生きている」を指標とする「真宗同朋会運動推進『中期教化研修計画』」を実動に移し、本年2月には、「帰敬式実践運動」のさらなる推進を図るべく宗務所に帰敬式実践運動推進総合会議を設置し、帰敬式実践運動をすべての教化事業に通底する基本施策と位置づけ、宗門挙げてその取り組みを進めております。

これらの取り組みが、遅滞することなく順調に進めてこられましたのも、宗門各位の深いご理解ご協力があってのことと、心から謝意を申し上げます。引き続き御遠忌円成に向けて鋭意取り組んでまいりたいと存じます。

また、2005年度経常費、御遠忌・御修復の御依頼につきましては、国内の経済情勢に一部回復傾向が見られる状況もありますが、全体的に未だ厳しい現状にある中で、尊いご懇念をお運びいただきましたこと、誠にありがたく衷心より御礼申し上げます。何卒、今後ともお力添えをいただきますよう重ねてお願い申し上げます。

 さて、本議会に提案いたします案件は、「宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌本部職制の一部を改正する条例案」等の諸条例案、また「2006年度諸会計予算」、「2004年度諸会計決算」、「宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌特別会計収入支出総計画変更案」等の財務案件であります。これらの案件について申し上げるに先立って、新年度における宗務執行の基本方針について述べさせていただきます。

 

1 宗務執行の基本方針について

宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌総計画が実動して3年が経過し、御遠忌法要厳修を5年後に控えた今日、今あらためて総計画当初の願いと方向性を確かめることが肝要であると思うのであります。即ち、「宗祖としての親鸞聖人に遇う」という基本理念と「本願念仏に生きる人の誕生」「真宗の仏事の回復」という基本方針であります。この基本の理念と方針の具現こそが、私ども内局に課せられた重要な命題であると申し上げてよいかと存じます。

 申すまでもなく、宗門が社会に存立するただ一つの根拠は、自らが真宗を学び、その教えに立って、一人でも多くの人に「本願を信じ念仏もうす」者、即ち自信教人信の誠を尽くす人となっていただくためであり、そのための真宗同朋会運動であります。その運動が、発足当初に掲げた「人類に捧げる教団」として、この時代社会に山積する諸課題に的確に応えていくためにも、さらなる教学の振興と教化の推進が不可欠であることは論をまちません。

 しかし、その現実は、今日の物質的豊かさの中に掻き消され、生活の実態や意識が都市化・世俗化していく社会の流れに埋没し、その渦中にある門徒を含む一般社会に対する教化が充分とは言えず、旧来の寺檀関係の範囲内での門徒教化の域を出ることができなかったのではないかと反省いたすものであります。

宗祖御遠忌を目睫とするこの時にあたり、浄土真宗を名のりながら「浄土」が語られなくなり、「いのち」を見失い、誰もが抱えざるを得ない苦悩に応答できなくなりつつあるという現状に真摯に向きあうことこそが、私ども宗門人一人ひとりに要請されているのではないでしょうか。いまこそ、教学への学びを回復しなければならないという危機感を全宗門人が共有すべきであります。物質文明の繁栄の底に深刻化する人類生存の危機の克服は、それを作り出してきた近代合理主義や人間中心主義では容易でなく、真宗への学びこそが、その克服への光明となると確信するからであります。

さらに言えば、親鸞聖人の教えに直入して、仏教としての真宗の基本を学び、どこまでも一人の凡夫として、その生存の根拠獲得のために、真宗と直面していくべきであります。そこで学び得た真実こそが、これからの人類生存の英知となるのでありましょう。

その点、昨年の演説でも触れましたが、あらためて私どもが立ち返るところは、どこまでも、先学、曽我量深先生が明らかにされた法蔵精神であります。一切群生海の罪業を背負って立つ救済意志としての法蔵精神そのものであります。その「如来を信ずる帰命の信念の主体」としての法蔵精神こそ、「『自身は現にこれ罪悪生死の凡夫、曠刧より已来、常に没し常に流転して、出離の縁あることなし』と信ず」という機の深信を徹底していくのであります。曽我先生は、この機の深信の徹底こそが、近代合理主義を超える唯一の道であることを示していただいていると思うのであります。

したがいまして、私どもは、機の深信のところに開かれる法の深信と共に、この二種深信の教えを原理として、宗祖としての親鸞聖人にお遇いし、「本願念仏に生きる人の誕生」を具現化しなければならないのであります。このような視点に立って、宗門存立の使命を全うする歩みを進めてまいる所存であります。

以上、宗務執行の基本方針について述べさせていただきました。以下、具体的な取り組みについて述べさせていただきます。

 

2 宗祖御遠忌に向けた教化の取り組みについて

(1)教化機構改革について

まず、教化機構改革へ向けた取り組みについて申し上げます。

昨年の宗会(常会)において、宗門における教学・教化の要であります教学研究所を核(中心)とした教化機構の構築へ向けた取り組みを進めることを表明いたしました。それは、これまで宗議会及び宗議会宗政調査会をはじめ各種委員会や審議会などからいただいております貴重な決議並びに建議や報告・具申等を受け止め、宗祖御遠忌さらには真宗同朋会運動50年以降の教化体制を見据え、教学・教化として果たすべき宗門の使命と方向性を明らかにするための機構改革に着手したいとの考えによるものであります。

2005年度において宗務総合企画検討会議「教学教化の機構改革に関する課題別会議」を設置し、これまでいただいている様々なご提言を踏まえた改革試案の作成に取り組んでいるところであります。

いずれにいたしましても、この課題は、様々な問題が渦巻く現代社会の只中にあって、真宗同朋会運動推進に資する教化機構はいかにあるべきかという、宗門の将来を左右する極めて重要な事柄でありますので、一内局の考えにとどまらず、今後さらに広く宗門内の意見をいただきながら進めていかねばならないと考えております。

したがいまして新年度におきましては、そのための宗務審議会を設置し、さらに一歩を進めてまいりたいと存じます。

 

(2)中期教化研修計画について

@帰敬式実践運動について ― 組を基軸として ―

次に、帰敬式実践運動について申し上げます。

帰敬式実践運動は先の蓮如上人五百回御遠忌を機縁として、全宗門人が一様に取り組むべき実践課題として提起されました。しかし、発足して10年を経、その間一時的な受式者数の微増を得たり、住職執行による帰敬式も地道な取り組みが継続されておりますが、宗憲第82条に規定する「すべて門徒は、帰敬式を受け、宗門及び寺院、教会の護持興隆に努めなければならない」との願いに則して十分に推進されているとは言い難い状況にあります。

このような状況に鑑み、昨年の11月に御遠忌専門委員会「帰敬式実践運動推進に関する委員会」を設置し、帰敬式実践運動のさらなる推進の方途についてご協議いただいたことであります。当局といたしましてはその報告を真摯に受け止め、本年1月に宗務所における推進態勢を強化するため「帰敬式実践運動推進総合会議」と、その事務を行うために「帰敬式実践運動推進事務室」を本廟部に設置いたしました。さらに2月には、全国教区教化委員長会・全国教区駐在教導会を開催し、教区・組における帰敬式実践運動の推進にむけた計画の策定を指示し、その後2月から4月にかけて、「帰敬式実践運動の展開について」を課題の一つに位置づけて内局巡回を実施いたしたことであります。

そして、御遠忌お待ち受け事業である総上山をはじめ、その他の諸施策と、この実践運動が連動し、立体的に組み合わせられるよう、教区はもとより、組同朋総会や組教化委員会において協議し検討され、組、教区、宗務所の連携のもと、積極的かつ具体的な計画をもって実動に入っていただきたいと存じます。

ご門首や鍵役から「教区はもとより組まで出向き、自らの果たせる分限を精いっぱい尽くしたい」との積極的なお言葉をも頂戴しております。お待ち受け法要(大会)等を勝縁として、すべての事業の追い風になることを願って止みません。

 

A総上山(真宗本廟参拝・奉仕団)の奨励

次に、御遠忌お待ち受け総上山について申し上げます。

申すまでもなく真宗同朋会運動の推進、即ち本派の教化は、常に真宗本廟奉仕を基本に据え展開されてまいりました。

このたびの宗祖御遠忌並びに両堂等の御修復は、あらためて宗祖の御真影のもとに全門徒が直参し、親鸞聖人のお心に触れ、その感動を通して、生きることへの勇気と力をいただくことから始まるのではないかと思量します。

その意味で、このたびの御遠忌お待ち受けには、同朋会館での奉仕団として、また、一日の本廟参拝として、是非ともご上山いただき、宗祖の教えにご縁をいただいた一人ひとりが、仏法を聴聞し、帰敬式を受式し、先達の念仏に生きていかれた歴史にお遇いしていく勝縁となるよう願って止まないのであります。

したがいまして、御遠忌に向けて一人でも多くの方々にご上山いただけるよう、さらなる趣旨の徹底を図ってまいります。

具体的には本廟奉仕の生活や意味をさらに広く伝えるべく、全国の寺院・教会や組の研修会などに出向き、視聴覚教材などを用いながら、奉仕上山・奉仕団の奨励を進めてまいりたいと存じます。各議員方におかれましてもご門徒と共に率先してご上山いただきたいと思うことであります。

 

B御遠忌テーマについて

さて、宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌テーマ「今、いのちがあなたを生きている」の今後の展開の方向性についてであります。この御遠忌テーマは御遠忌基本理念「宗祖としての親鸞聖人に遇う」、すなわち私たちが本願念仏の仏道に生きる者となっていくための一つの道しるべとして掲げさせていただきました。そういう意味から、「中期教化研修計画」における7つの主な施策を推進しながら、御遠忌基本理念と御遠忌テーマへの学びを深めて自らの課題を明らかにし、「教区運動方針」の具体化に向けて、その取り組みを着実に進めてまいりたいと存じます。

そこで、今後の御遠忌テーマの展開においては、あらためて「宗祖としての親鸞聖人に遇う」という基本理念のもと、「真宗における『いのち』を問い明らかにすること」、また「『いのちの私有化』という問いへの学びと深まりから私たちの課題を明らかにしていくこと」を基本として、教学研究所の研究業務をはじめ中央同朋会議や教区教化事業、その他必要な事業の中で継続的に課題化して取り組みを進めてまいりたいと存じます。

すでに各教区においては、中期教化研修計画の教区の運動展開に応じて、御遠忌テーマを掲げての研修会や座談会等が開催されつつあります。こうして、着実に宗門内への浸透が図られておりますが、より積極的な御遠忌テーマの周知と願いの展開を目指すうえで、2006年度から教区・組が主体的に御遠忌テーマを発信できる環境を整えるとともに、広く一般社会の人々に対しても御遠忌テーマが持つ意味の普及を図ってまいりたいと存じます。

 

3 宗祖御遠忌への取り組みについて

(1)御遠忌広報について

次に、宗祖御遠忌にかかる諸事業について申し上げます。

まず、御遠忌の広報への取り組みでありますが、今申し上げました御遠忌テーマの展開や中期教化研修計画の実動といった、御遠忌お待ち受けの教化事業について具体的な歩みが進められておりますが、御遠忌広報の果たすべき役割はより一層重要なものとなってくることは必然のことであります

そこで、新年度より『同朋新聞』を刷新し、御遠忌広報の柱の一つと位置づけ、さらには社会に対する一般広報を含めた総合的視点からの広報展開を図ってまいらねばならないと存じます。

特に『同朋新聞』につきましては、制作システム及び編集体制を新たに構築し、紙面をこれまでの8頁から12頁に増やし、オールカラーとして、あらたな企画を盛り込み、「同朋社会の顕現」を目指す教化・広報紙として、すべての門徒に読んでいただける紙面となるよう取り組んでまいります。

したがいまして、このたび「宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌本部職制の一部を改正する条例案」を提案し、御遠忌の広報機能についてさらなる充実を図るべく、全力を挙げて取り組んでまいりたいと存じます。

 

(2)記念事業について

@『教行信証(坂東本)』の復刻(完全複製)について

次に、『教行信証(坂東本)』の復刻事業について申し上げます。

昨年7月に、初めて高精細印刷を用いた「カラー影印本」を刊行いたしましたところ、1000部を超える申し込みが当派寺院・教会並びに有縁の方から寄せられ、根本聖典であります『教行信証』への関心の高さを窺い知ることができました。

一方、この復刻にあたっては、体裁・紙質等を含め、できるだけ原本と同一様態とする「完全複製本」の製作も進めてまいり、現在、最終的な加工・製本作業が行われております。この完全複製本は2部製作しており、1部は原本と同様に保存し、1部については真宗本廟報恩講において安置し、また宗祖御遠忌を記念して開催される展覧会等での展観、あるいは様々な分野における学術研究に資するものと位置づけてまいりたいと考えております。

なお、各教区、関係学校をはじめ、公性の高い図書館、研究機関や海外の開教拠点などを対象として、カラー影印本の贈呈を積極的に行ってまいりたいと考えております。この贈呈につきましては、同じく記念事業であります聖教編纂における『教行信証(坂東本)』の翻刻本製作や英訳『教行信証』再版事業とあわせて、今後、『教行信証』に顕らかにされた宗祖の本願念仏の教えを、より多くの方々に感得いただけるような取り組みとして展開してまいりたいと存じます。

 

A英訳『教行信証』再版及び鈴木大拙没後40年への協力について

次に、鈴木大拙先生翻訳の英訳『教行信証』の再版事業の進捗について申し上げます。

現在、編集監修者に東京大学名誉教授の前田專學氏を迎え、グロッサリ(語彙)等の検討を加えながら、親鸞仏教センターにおいて、2008年に刊行すべく、その取り組みを鋭意進めております。

ところで、本年は鈴木先生がお亡くなりになられて40年になります。先生にゆかりの深い鎌倉、金沢、京都の3市において、「鈴木大拙没後四十年記念展」が開催され、当派としてもその共催をいたすこととなりました。特に京都においては、10月10日から11月28日までの間、大谷大学博物館において開催されますので、御正忌報恩講のご参詣に併せ、ぜひご覧いただきたく存じます。

 

 

B御遠忌記念出版『親鸞の世界』について

さて、このたび宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌を記念して、シリーズ『親鸞の世界』全10巻を刊行することといたしました。

以前より、教学・教化に寄与する、書き下ろしによる出版物発刊への要望は多く、本出版事業を御遠忌お待ち受けの教化事業の一環として位置づけ、寺院はもとより門徒家庭における必携の書籍として、宗祖御遠忌を迎える気運を高めていきたいと考えております。

各巻の内容は、親鸞聖人のご生涯全体をはじめ、釈尊から宗祖へ伝えられた仏教の歴史、宗祖の遺された聖教の世界や、教化の歴史など幅広く企画しております。

この記念出版にあたっては、広く親鸞聖人の教えが門徒・一般にできるだけ分かりやすく伝わることを主眼とし、編集業務の一部及び出版業務について専門の出版社に委託し、広範なる一般書店への流通をも目指していきたいと考えております。

 

C『真宗本廟造営史』の刊行について

次に、『真宗本廟造営史』(仮称)の刊行について申し上げます。

両堂再建に関する史料は、江戸時代から明治時代における4度の焼失を乗りこえ、その現存数は数万点に及び、図面・絵画・事務書類等々、多岐にわたるものであります。現在、その調査・整理作業を鋭意進めておりますが、その成果を取りまとめ、記念事業として、史料・論文集『真宗本廟造営史』として刊行いたしたいと存じます。

刊行にあたりましては、大谷大学にその研究・執筆業務を委託し、歴史・建築・美術等のさまざまな分野について、学内の研究者のみならず専門家の協力を仰ぎ、私ども真宗門徒の先達の願いに学ぶことはもちろん、豊富な史料の公開と研究によって、近世から近代における真宗本廟造営の歴史的な意義につきましても、広く世に問うてまいりたいと存じます。

 

D越後御流罪八百年記念事業について

また、来る2007年は宗祖親鸞聖人が承元の法難で越後へ遠流に処せられて800年を迎えます。そこで高田教区においては、この宗祖の御流罪に心を致し、800年の時を超えて私たちにまで歩み来たった念仏の道を確かめるべく、宗祖御遠忌お待ち受けの事業として「越後御流罪八百年記念事業」が計画されています。

宗祖のご生涯における御流罪に思いをいたすとき、この記念事業は一教区の事業であるばかりではなく、教区を超えて全ての真宗門徒とともにお勤めされるべきことであると思うものであります。そして、その記念事業の一環といたしまして、明治の両堂再建用材切り出しにおいて雪崩事故の悲劇が起こりました尾神嶽の報尽碑とその周辺の整備がなされます。これら「御流罪八百年記念事業」計画を、宗派としても大切な宗祖の讃仰事業に位置づけたいと考えております。

 

(3)御修復事業について

@御影堂修復工事の進捗について

続いて、宗祖御遠忌の特別記念事業であります御修復事業の進捗について申し上げます。

2004年3月に起工いたしました御影堂修復工事は、本年11月より予定される瓦の葺き上げに向けて、順調に進められております。

その進捗内容は、『真宗』『同朋新聞』で毎月お伝えしているとおりでありますが、この夏からは、耐震補強工事、内陣・外陣の美掃を主とした内装工事などが予定されております。これまでの瓦再資源化などの環境問題への取り組みとともに、今後も遺漏ない御影堂修復工事を進めてまいりたいと考えております。

 

A御影堂仮設素屋根の転用について

次に、御影堂仮設素屋根の転用計画について申し上げます。

これは、御遠忌法要後に阿弥陀堂用の仮設素屋根を新たに建設する当初計画から、現在の御影堂仮設素屋根をスライドし、阿弥陀堂修復のための仮設素屋根として転用する計画に変更するものであります。

このことにより、大幅な工事費の節減が見込まれるとともに、御遠忌法要前に阿弥陀堂・御影堂門の修復工事を確実に実施することを宗門内外に表明し、法要期間中には、その素屋根を参拝者のために有効に活用する企画も考えていくことができます。

この計画変更によって、阿弥陀堂に素屋根がかかった状態で御遠忌法要を厳修することとなりますが、当局といたしましては、長期にわたる両堂等御修復事業の確実な遂行と、廃棄物削減という環境問題へのさらなる対応を図るため、宗門世論の幅広い賛同を得ながら、計画を推進してまいりたいと存じます。

 

B境内全域設備整備への着手について

次に、「境内全域設備整備工事」について申し上げます

これは、御影堂修復工事にて計画されております電気・防災などの設備工事に着手する今の時期にあわせて、両堂をとりまく真宗本廟境内全域の将来的な保全・管理を見据え、防災センターの設置、防災・防犯に関する基幹設備などの整備に取り組もうとするものであります。

この事業は、新規の事業でありますが、大切な両堂及び境内諸施設を間違いなく次代へと相続・護持し、さらには参拝者の安全に配慮するためには必要不可欠なものであると認識し、御遠忌総計画の中で御影堂修復工事費とは別に、可能な限り予算を確保して、段階的に実施してまいりたいと考えております。

 

(4)須弥壇収骨について

続いて、須弥壇収骨について申し上げます。

御影堂の御修復事業に着手するにあたり、相続講創設以来、御影堂須弥壇下に収めさせていただいておりましたご遺骨は、すべて仮収骨所にお移しさせていただいております。そして、ご遺骨をお移しした後、御影堂床下を詳細に調査したところ、ご遺骨を収めるために設けた仕切り壁が長年にわたって御影堂床下の通風を遮断し、白蟻・腐朽菌・鉄砲虫等の原因となっていることが判明しました。

御修復工事に着手する時点では、これまでお収めしてきた方法と同様の形態にてご遺骨をお戻しする計画であり、今後の須弥壇収骨についても相当の余裕があると考えておりました。しかし、御影堂を将来にわたって相続していくためには、御影堂床下環境の保全を最優先しつつ、このたびの御影堂修復工事に併せて、御遠忌後の須弥壇収骨の方途について検討せざるを得ない状況にいたったことであります。

もとより、相続講賞典としての須弥壇収骨については、年間十万人に及ぶ方々が真宗本廟に参拝される機縁となり、亡き人を縁として真宗の教えをより深く受け止めていただく重要な教化につながる制度であると認識するものであります。長年にわたる門徒の真宗本廟の宗祖のもとへというお心はもとより、重要な真宗本廟教化として、さらには宗門財源の根幹をなしている現状を真摯に考えますと、宗務審議会「財源に関する委員会」からの答申にも述べられておりますとおり、当局としては須弥壇収骨については、今後も当然、存続しなければならないと考えるものであります。

したがいまして今後、須弥壇収骨施設の拡充の具体的な方法及びその資金計画について、広く宗門内のご意見をお聞きし、然るべき審議を経て宗門世論のご理解を得ながら進めてまいらねばならない重要課題であると認識いたしております。

いずれにいたしましても、これまでに既に仮収骨所におさめておりますご遺骨につきましては、間違いなく御影堂内陣床下に万全の環境を確保してお戻しさせていただくことであり、今申しました御遠忌後の受け入れに対応するための施設拡充の方途につきましては、門徒・遺族のお心を尊重しつつ、須弥壇収骨の伝統に最も相応しい方法でお収めすることを第一義として進めてまいる所存であります。

 

4 宗務の主な施策について

(1)教区・組の改編及び門徒戸数調査について

次に、宗務の主な施策について申し上げます。

まず、教区及び組の改編に関する中央改編委員会、並びに中央門徒戸数調査委員会の現況について申し上げます。

教区及び組の改編については、中央改編委員会から昨年10月、@教区及び組の改編は「同朋会運動」を展開する一環とし、A教区改編と同時に「組の改編」も同レベルの課題として位置づけることを骨子としてまとめられた「中間報告書」をいただきました。

そして現在、同委員会では、さらに教区及び組を基軸とした機構確立へ向け、現況把握のための教化及び財政等の「基本項目シート」を作成し、教区の実態調査を開始し各教区からの報告をいただくことになっております。

改編の主なる論点は、将来の人口動態を見据えた教区及び組の格差是正はもとより、国の行政区画との対応、そして人材養成にかなった教化施設の拡充及び財源の確保など実に多岐に亘っています。ただ、何分にも私どもが70年間以上に亘り馴染んできた教区制であります。その改編は容易なことではありませんが、教化体制をより一層充実させ、教化に資する人材の確保が恒常的に可能となるような歩みになりますことを願っております。

次に、門徒戸数調査については、中央調査委員が「宗務改革推進委員会」の「最終報告書」を受け、昨年5月から本年2月末まで各教区調査委員会への聞き取り調査に出向いたしております。そして現在、中央調査委員会の委員一人ひとりが主体的に受け止められ、全国の聞き取り調査の資料を分析・整理し、全国一斉調査に供する調査票の作成を開始しています。

ところでこの調査は、いうまでもなく教区間の割当基準における不透明感や不公平感の是正を図ろうと、門徒戸数調査に焦点を当て全国からの要望を受け、始められたものであります。そのためには、全教区共通の調査票の作成が不可欠であることは申すまでもありません。

ただ、中央調査委員会は、全国の調査を進めるなかで、教区間比較のための門徒戸数を基とした寺院の門徒に対する法務活動を指数化する調査が基本であるが、相続講創設以来の募財体制を維持している教区や過疎・過密など深刻な問題を孕んでいる地域など、その特性をも示す調査の必要性も考えられております。そこで現在、「基本シート」と「地域特性シート」に区分し、予備調査を繰り返し実施し、調査票策定に向け進めていく旨報告をいただいております。

これまでの両委員会の積極的な取り組みに対して、あらためて謝意を表する次第であります。つきましては、新年度は、中央改編委員会からは「試案」をもって説明会に、また中央調査委員会からは「調査票案」をもって予備調査にそれぞれ各教区にお邪魔する予定であります。委員出向の節は、格段のご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

(2)部落差別問題をはじめとする差別問題への取り組みについて

次に、部落差別問題をはじめとするさまざまな差別問題への取り組みについて申し上げます。

当局といたしましては、解放運動推進本部及び女性室が取り組んでおります諸課題の共有をはかることは勿論のこと、「同和運動」から「解放運動」への名のりの変更に伴い、教区の関係機関や事業の名称についても、その変更にかかる取り組みが進捗することを願うものであります。

 特に、2006年度においては、多くのご寺院に協力いただき、昨年11月に「真宗大谷派同和関係寺院協議会」が、当局とともに実施した「真宗大谷派における部落差別問題に関する実態調査」のデータ集約と分析を進め、報告書の作成に取り組むことでありますが、その内容につきましては「部落差別問題等に関する教学委員会」の進捗をも勘案しながら、部落差別問題に関する取り組みの深まりを期してまいります。

 また、2002年度から北海道教区と共に取り組んでまいりましたアイヌ民族差別問題に関する学習資料集を発行し、啓発、学習に資してまいりたく存じます。

 なお、既に一般社会・企業等において取り組みが進められておりますセクシュアルハラスメントへの対応につきましては、宗門においても重要な課題であると認識いたしており、「男女両性で形づくる教団」の実現という基本的な課題を踏まえ、ガイドライン策定と相談窓口設置に向けて作業に着手いたしており、その具体化に向けて鋭意取り組んでまいる所存であります。

 

(3)共済制度について

さて、ご存じのとおり昨年の宗会(常会)において「ボランティア委員会の設置」についての請願があり、加えて国の「保険業法等の一部改正」に伴う宗派の「共済制度」への影響に鑑み、本年2月、宗務審議会「災害復興支援に関する委員会」を設置いたしました。

その諮問事項は、@同朋相互扶助の精神に立脚して、災害復興支援を行うための第2種共済制度の点検・総括について、A宗派ボランティア体制の構築について、の2つの事項であります。

なお構成については、教区門徒会改選時で参議会が未成立であったため、宗議会議員ほか学識経験者など15人の委員で発足いたしましたが、今後は参議会議員からの参画も得てまいる所存であります。

ところで、今常会に提案いたしました「共済条例の一部を改正する条例案」につきましては、現今、キャッシュレスといわれて久しい状況にあって、一般企業のみならず官公庁においては、直接現金の収受ではなく、口座に振り込むことが主流となっています。このことにより税務処理の明瞭性を保つばかりか、事務の効率化をも高めることになります。

したがって、宗派及び寺院における共済給付に係る第1種、第2種の共済金の給付方法を、宗務所から直接申請寺院の口座に振り込むこととし、会計処理の明瞭化と事務の効率化を図ってまいりたいと存じます。

 

(4)時局問題について

最後に、時局問題について申し上げます。

昨年の宗会(常会)におきまして、「教団問題」に係る訴訟につきましては、すべて解決をみた旨ご報告申し上げましたが、唯一、争訟とはなっておりませんが、懸案である「真宗大谷派本廟維持財団」の問題が残されております。

「真宗大谷派本廟維持財団」に対しては、歴代宗務総長から大谷暢順理事長に対し、再三に渡り面談の申し入れを行っておりますが、面談がかなわないばかりか、その返答すら得られない状況にあります。その間、当財団が「真宗本廟たる本願寺の護持相続」のための助成を行うよう、京都府庁にも行政指導の要請をいたしておりますが、解決の糸口を見出すことはできておりません。

したがって、従来どおり「宗派と当財団のあるべき関係性」、即ち「宗憲に立脚した宗門の所属団体としての維持財団」であることを厳に主張してまいると同時に、宗門世論を誤りなく受け止め、当局の責任において、時宜に適った対応につとめてまいる所存でございます。議員各位のご理解をお願い申し上げる次第であります。

 

以上、宗務の重要な課題における基本的な方針について申し上げました。何卒、議員各位におかれましては、本議会に提案いたしますいずれの案件につきましても、原案どおりご可決いただきますようお願い申し上げる次第であります。

以 上